小説書きの嘆きを訊く「文派の個独」

第七回 17P氏

「文派の個独」第七回

 皆様、こんにちは。
「17P@無双エロパロ」を運営している「17P」と申します。
 サイト名にもあるとおり、とある家庭用ゲームのエロパロ――成人向二次創作を専門としています。
 このたび、X-rated SearchのDAI様からお声がかかり、二次創作サイトとしては初めて、「文派の個独」に参加させていただくことになりました。
 健全なゲームから不埒な妄想をひねり出し、あまつさえ公に発信する私という奴は、いったい何を悩み、苦しみ、喜びとしているのか。秋の夜長の暇つぶしになれば幸いです。

そこに愛はなかった!?

 原作をご存じない方に内容を簡潔に説明すると、
「いにしえの武将の一人となって数千人の敵将兵をなぎ倒し、自軍を勝利に導くアクション+シミュレーション」
といったところです。もちろん18禁的なイベントが用意されているわけでもなく、ひたすら爽快感を追求したゲームのはずなんです。本来は。
 私も当初は、純粋にゲームをやり込んでいたはずでした。では、どうして道を踏み外してしまったんでしょうか。戦う女性たちのいでたちや仕草、セリフに色香を感じたのは確かです。 でもそれは「妄想する理由」ではありますが「執筆を始める理由」までにはいたりません。頭の中でハァハァすることと、実際に公表することの間には、かなりの隔たりがありますから。

 もっとも大きな要因。それは、ネット上に二次創作を投下する「職人」と呼ばれる匿名の人々。彼らの姿そのものが、鮮烈に印象に残ったからです。
「ゲームから、ここまで物語を膨らませられるのか」
と。エロさもさることながら、文章そのものの力をひしひしと感じました。人様の文章を目にしなければ、妄想は頭の中で漠然と終わっていたかもしれません。
 ならば後々まで残るような作品を、いつか自分も書きたい。ある日、知識も経験も乏しいのに、そんな欲をかいて一歩を踏み出してしまいました。
 ですが、技巧だけ磨き、称賛だけを求めても、うまくいくわけがありません。今から読み返してみると、形はどうにか取り繕っていても中身がスカスカです。ひどいのになると短編すら途中放棄してます。最も大切な「原作への思い入れ」が詰まっていなかったんですね。

原作、この難儀にして愛しき存在

 だから二次創作は完全オリジナルに比べて、決して簡単に書けるものとは思っていません。
 たしかに元になる世界観があり、ストーリーがあり、何といってもキャラクターがいます。プロのクリエーター達が築き上げたものを借用できる、という意味では楽かもしれません。
 しかし、ある作品のエロパロをわざわざ読もうなんていう人は、当然その作品についてよーく知っています。愛している、と言ってもいいでしょう。自分の文章は、その「愛されている原作」と常に比べられるのです。たとえば口調を微妙に間違えただけで、読んでいる側はすごく引っかかってしまいます。最悪、同一人物にすら思えなくなってきます。世界や人物を再現するというのは、想像以上に難しいものです。
 ちなみにヒロインの中には、関西弁を話すキャラが2名います。いつもながら、セリフを書いていて正しいのか自信が持てません。多分、正確じゃないんだろうな……
 いっぽうで、ゲーム中では決して描かれない領域は、とことん自分で考えるしかありません。
「この娘はこういう性格だから、こういう性癖があるに違いない」
逆に、
「こんな隠された性癖を持っているのかもしれない」
と。ちなみに私は性に潔癖な人物ほど、落差をつけるようにしています。一皮剥くと淫乱の資質十分、みたいな。
 肉体的な特徴もしかり。男を手玉に取る魔性の女と、自分が女であることすら認めない女丈夫では、あんな所やこんな所はどう違うのか。公式な答えがあるはずもないですから、ゲーム中のイメージから膨らませていきます。原作を知る人には「なるほどねー」と、ニヤリとしてもらえるような設定を目指して。
 そして、話の筋を立てる際も、原作からの繋がりは忘れません。原作のどの場面から、どう展開して自分の書く話に行き着くのか。人物だけを借りたような話には陥らないように気をつけています。
 再現と独創の両立。これこそが、二次創作を書く際に難しく、また面白く感じるところです。

 実は自分のサイトを持つ前は、いろいろな場所をお借りして投稿していたのですが……「二次創作になっていない」ものばかり書いていた時期がありました。
 なぜか自作のキャラを作品世界の中で活躍させようと、躍起になっていたからです。いわば独創一辺倒。もちろん、自作キャラを魅力的に動かせる書き手もたくさんいらっしゃいます。少なくとも今の自分には、その力がないということです。
 どうにかマシなものを書けるようになったのは、やはり原作をすみずみまでプレイし、そのうえで既存の女性キャラ全員を丁寧に描いてからでした。
「全員分書いてくれ」
と、名前も知らないどなたかが背中を押してくれたんです。しかも、今まで避けていた本格的な凌辱を。
 原作を少なくとも人並み以上にプレイしたうえで、資料集を熟読し、身体つきや台詞回しを頭、というより手に叩き込みました。やりがいこそあっても、苦痛とは思いません。苦痛に感じていたら、そのジャンルでエロパロは書けないんじゃないでしょうか。
 全力で突っ走って4ヶ月。再現と独創のバランスが、以前よりは取れるようになったと思います。何より、原作をもっと好きになりました。もちろん、18禁的な意味で。

 遠回りしすぎの感もありますが、私は今やっと私の信じられる道を歩いています。

 とはいえ、心の片隅に
「一度はオリジナル書いてみようかな〜」
という欲もあったりします。そんなに簡単なものでもないと分かっているのに、懲りないものです。

 ついでにもう一つ思うのは、
「もしもエロ絵が描けたなら」
ということです。だけど私には画才がない! そりゃもう致命的に。そんなわけで、当サイトはほぼテキストオンリーです。一番華やかなページが、よそ様のバナーをペタペタ貼ったリンクのページとは何事でしょうか。イラストサイト様の、一目見たときのインパクトが、うらやましい限りです。

個独≠孤独

 当サイトは一応、17Pの個人サイトです。しかし実際のところ、作品を一人で作っているわけではありません。
 読者の皆さまからリクエストを広く募り、それをもとに物語を作り上げています。WEB拍手のお礼メッセージや突発企画といったものがあるので、全部が全部ではありませんが、大半の作品はリクエストを原案にしています。

 自分が書きたいものをだいたい書き終えたとき、さて次はどうしようと思いました。私は誰か一人だけ書きたがるきらいがあります。ヒロイン候補はたくさんいる(現在19人)のに、これはもったいない。
「そうだ、読者が読みたいものを中心に書こう! 自分の勉強にもなるし」
ということで、リクエストを募ることにしました。
 ありがたいことに、名も知らぬ方々がいろいろとリクエストを送ってくださいます。自分が想像もしないカップリングやシチュエーションも多く、正直、その自由な発想に負けたと思うこともあります。それくらい、一通一通から原作への思いが伝わってきます。
 一人で数千字書くのは無理だという人もいるでしょう。しかし、こうした形で創作活動の一端を担ってもらえるのだから、自分のやっていることには意味があると思えるのです。

 参考までに、リクエストからサイトが更新されるまでについて触れますね。
 いただいたリクエストから、サイト全体のバランスなども考えたうえで、作品化するものを決めます。シチュエーションなどが書かれていれば、それをもとに全体のあらすじを考え、そこに肉付けしていきます。当然、Hシーンを重点的に。
 見直しがすんだらアップロードするんですが、ここから先が長いんです。作品一覧や新作紹介のページを書き換え、各検索エンジンに更新情報を載せ、RSSを更新し、PINGを打つ。
 サイトの構成も改良を加え、より読みやすく管理しやすくしていきたいものです。

永遠じゃないかもしれないけれど

 思えば遠くへ来たものです。もちろんこれからも、末永く続けていきたいのですが……
 はやりすたりは二次創作にとって宿命とも言えます。今原作にしているゲームが、今後どれほど活況を維持できるのか。それはメーカーの営業戦略に負うところがとても大きく、個々人の情熱だけではいかんともしがたい部分があります。
 しかも、エロパロという立場の悲しさ、あまりに公的な形では応援できません。二次創作とはすなわち一次創作者=メーカーがあるからこその呼び名で、権利上の問題とかがけっこうデリケートなんですよ。
 何はともあれ、現在進行中のシリーズです。常に新しい展開を追い、新たな作品をテンポよく投じていきたいと考えています。

次のパートナーかもしれない、画面の前のあなたと共に。

2008年10月1日 17P
17P@無双エロパロ

Written by 17P
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